外国人の「日本体験記」は、セレクションが充実したジャンルと言えます。しかし、そのような本のほとんどは男性の著者によって書かれているので、女性が書いた体験記を見つけるのは新鮮に感じられます。

Japanland: A Year in Search of Wa の著者であるカリン・ミュラー氏は、いつもひとつの国からまた次の国へと出向き、本の執筆やドキュメンタリーの制作に携わっているようです。過去にもベトナムや「インカ道」についてのドキュメンタリーを制作しています。また、ウェブサイトによると今はアフリカに滞在しているようです。きっとすぐに、アフリカについての作品を発表することでしょう。

そういった人生をうらやましく感じるかも知れません。。しかしその結果として、この本を読むと、彼女にとっては日本もひとつの「プロジェクト」に過ぎないような印象を受けました。「異国情緒あふれる場所を見つけて、それについて書きたいわ」みたいな。

残念ながら、日本に本当に興味を持っている人たちは、そのようなエキゾシズムに多少うんざりするかもしれません。舞妓さんの赤い唇にタイトルが印刷された表紙を見ても、陳腐な印象を受けるかもしれません。それでもしかし、著者は文章が上手いし、いろんな面白い経験を熱意を持って書いているので、それだけでも本を読む価値はあるでしょう。

著者のホームステイ先の家族と、彼らとの複雑な人間関係は特に注目すべきです。現実的かつ鮮明で、少し悲しい反面、とても面白おかしく書かれています。ホストファミリーの「若い外国人のお客さんにホスピタリティーを見せてあげようじゃないか」という、聞こえは悪くないアイディアが、実際に実行すると予想外に複雑なことだというのがありありと分かります。ホームステイ先の母親は特によく書かれています。けっして、「よい人」に書かれているというわけではありませんが。

ホームステイ先の家族は、このように本という形で自分たちの生活が丸裸にされたことについてどう感じているでしょうか。(ミュラー氏を受け入れると承諾したとき、自分たちについて書かれるとは思っても見なかったことでしょう。それとも、予想していた?)私の視点から言わせてもらえば、これがドキュメンタリー的アプローチの危険です。サファリの時にアフリカに住む動物の写真を無断で撮ってもいいのと同様、見たものすべてをそのまま世の中にさらしても大丈夫というドキュメンタリー特有の考え方。それでもなお、この本に書かれている日本人家族とその毎日の生活に対する著者の覗き見的視線、そして彼らと若いアメリカ人ゲストの文化的コントラストを、楽しまなかったといったら嘘になります。父親は私が会ったことのある日本人ビジネスマンたちを彷彿させ、彼らの家庭生活もこんな様子なのかと考えずにはいられませんでした。

そのほかにも面白かったのは、著者が日本人の刀職人とその若い外国人の弟子を訪ねたとき、お祭りに参加したとき、そして四国のお寺に巡礼したときなどのエピソードです。著者が時に泣き言が多く鑑賞眼に欠けるように思えることはあっても、この本はなんと言っても色鮮やかです。

日本とその文化についての情報源としては、この本はお勧めしません。特定の視点から書かれた包括性に欠ける情報だからです。しかし、日本に興味を持っている方、そして他の視線から見た日本について知りたくてたまらないという私のように日本ファンの方には、きっと楽しく読める作品だと思います。

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